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 ミケランジェロ・アントニオーニ『砂丘』 (1970 米) ★★★★☆

 1970年頃というと、『俺たちに明日はない』(1967)、『イージー・ライダー』(1969)、『バニシング・ポイント』(1971) と、いわゆるアメリカのニューシネマがボクにどっと押し寄せてきた。この3つに共通しているのはヒーローの破滅。ボニーとクライドは蜂の巣のごとくに銃弾を浴び、キャプテン・アメリカは「オン・ザ・ロード」であっけなく射殺され、コワルスキーは道路に盾のように並べられたブルドーザーに激突していった。
 この『砂丘』はその当時に見てなかったのだけれど、これらの映画がパッと思いうかぶのだ。良きにつけ悪しきにつけ、壮絶な破滅というのがもてはやされた、そんな時代だった。その中でもっともショッキングだったのはもちろん三島由紀夫だったのだけど。
 とにかくこの『砂丘』もヒーローは破滅してしまう。マークは小型飛行機を盗んで飛び立つ。ダリアはリゾート開発会社の秘書としてデスバレーに向けて一人車を走らせている。この二人が空と陸で出会って....あんまり話のプロット追いかけても意味ないか。逆にそんなものを意識から排除してしまったほうがわかりやすい。たぶん、最近のストーリーだけっていうような映画を見慣れてたら、ナニコレ?もん。何が正義なんか、そんなものはなぁ〜んもないからな、この映画には。
 いまの時代にこの『砂丘』を見るとするなら、いっそ《アントニオーニの風景論》として見ると、むちゃくちゃにおもしろかった。なんてことを書くと、デスバレーの壮大な見棄てられた自然の風景が、となってしまうのだけれど、例えばZabriskie Pointに、マヌケ田舎っぺヤンキー家族連れが来るってシーンがあるんだけれど、そお家族の息子がソフトクリームを舐めているのが窓に映る。その窓にはアメリカのど田舎のステッカーが貼られてあるとかね。あるいはテネシー・ワルツが流れる中で西武そのもってじいちゃんがビールを飲む。そして、LAの街の風景ではCurtis Mayfieldの"There's No Place Like America Today"のジャケットまんまの風景が。
 もちろん、Zabriskie Pointでの乱交シーンには息をのんでしまうし、ラストの爆発シーンね。これは必見です。

Zabriskie Point
監督 ミケランジェロ・アントニオーニ
製作 カルロ・ポンティ
脚本 ミケランジェロ・アントニオーニ / トニーノ・グエッラ / サム・シェパード / フレッド・ガードナー
撮影 アルフィオ・コンチーニ
音楽 ピンク・フロイド
出演 マーク・フレチェット / ダリア・ハルプリン / ロッド・テイラー / ポール・フィックス / ハリソン・フォード



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2004年02月16日(月)
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