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 アナンド・タッカー『ほんとうのジャクリーヌ・デュ・プレ』 (1998 英) ★★★☆

 ジャクリーヌ・デュ・プレって実在の人物だったんだね、知らんかった。で、この映画はヒラリーとジャクリーヌの姉妹が書いた『A GENIUS IN THE FAMILY』、言ってみれば半ば自伝で、二人の共著にはなってるけれど、たぶん主に書いたのは姉のヒラリーのほうでしょ。当然ながら、原作は読んでませんが。「家族の中の天才」だなんてね、ヒラリーの心もかなり屈折してるんでしょ。というかね、映画の中で描かれていた、例えば、自分の夫を妹ジャクリーヌに性的対象として貸すなんてのが事実だとしたら、屈折せざるをえないだろうし、その時点で屈折しきってるわけです。
 以前にこの映画を見た時には、邦題が『ほんとうのジャクリーヌ・デュ・プレ』ということもあり、どうしても妹ジャクリーヌのほうに目が行ってしまってたんだけど、原題『HILARY AND JACKIE』だということを意識してみると、けっこう違った目で見られる。それでも、静の姉ヒラリーに対して、動の妹ジャクリーヌのほうに目が行ってしまうものなんだが、このあたり、映画でも中途半端な気がする。中盤で《HILARY》《JACKIE》と、ここはHILARYのパート、ここはJACKIEのパートと区切って見せて、同じ事件、つまり「天才チェリスト」という冠をかぶせられて破綻をきたしたジャクリーヌがヒラリーの夫を借りる、その事件を両側から見せようとしているのだけれど、ちょっと首をかしげたくなる。あんまりこうして区切る必要もないような、どうしてもジャクリーヌに比重がかかってしまうのは仕方ないのか。
 ケチばっかりつけてるようですけどね、この姉妹に弟がいるんだね。どうでもいいような。弟がいたということは事実なんだろうけれど、この激しやすい姉妹の下オトンボだったのか、いてもいなくてもどうでもいいような。それならいっそ映画では削ってしまえばいいじゃないか。この弟のことに限らず、全体になんか思い切りってのに欠ける気がするんだよね。
 キーとなる姉妹が幼少だったころの浜辺のシーン。これもいいことはいいんだけど、多分原作にもあったんでしょうが、そこに収束させてしまうというのもボクは好きじゃない。どろどろした姉妹関係であってもいいじゃないか。他人から見ればスキャンダラスなドラマだけれど、この映画をつくった人たちのこの姉妹に対する位置づけがいまひとつよくわからない。
 演奏のシーンだけど、エミリー・ワトソン、あ、このエミリー・ワトソンの顔ってどこかジャニス・ジョップリンにも似てるなぁと思ったんだけど、彼女自身が弾いてないでしょ。そんなの当たり前ですか?(-。−;) ま、そこんところは、チェロって楽器はボク自身わからないので、騙されておきましょう。なんでもジャクリーヌ・デュ・プレ自身の音源も使われているとか。
 ところでチェロってのは、あの大きさからすると、演奏者がもっとも楽器を人間に置き換えて激しやすいんじゃないかと思うんだけれど、どうなんだろう。

HILARY AND JACKIE
監督 アナンド・タッカー
製作 アンドリュー・ペイターソン / ニコラス・ケント
脚本 フランク・コットレル・ボイス
撮影 デヴィッド・ジョンソン
音楽 バーリントン・フェロング
出演 エミリー・ワトソン / レイチェル・グリフィス / ジェームズ・フレイン / デヴィッド・モリセイ / チャールズ・ダンス / セリア・イムリー / ビル・パターソン / オーリアル・エヴァンス / キーリー・フランダース


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2004年03月20日(土)
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